もうひとつ、ドガの創造意欲を掻き立てたものはトゥシューズとチュールでできたバレリーナのチュチュでした。どちらも当時はまだ製品としても最新の技術を駆使したものでしたから、ドガは結構新しもの好きだったのでしょう。ただ、ドガの絵がそれらの新しい製品を紹介するといった、歴史の記録としての絵画なの
であればそれは写真に取って代わられていたことでしょう。今日もなおそれが人々の興味をひくものであると言うことは、それだけではない、何かがそこに描かれているからといえるでしょう。
なぜ踊るのか?
その何か、そしてドガの真のテーマはそこにあったといえます。
自身の芸術を極めるため、毎日の訓練を黙々とこなすダンサー。
その傍らでこれまた来る日も来る日も淡々と筆を走らせる絵描き。
そこにドガは芸術の分野や社会的身分は違っても、同じ芸術家として強く共感していたのでしょう。